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安部公房さんの作品を読みました。
文学史に残る著名な作品なので、
どういう風に感想を書けばいいのか…
難しいですが(苦笑)。
まずは「まさしく文学的だなぁ」って、
そんな底の浅い感じの印象を受けました。
でも、間違いなく文学的な薫りを
濃厚に漂わす作品だと思います。
まぁ近代日本文学史にその名を残す
作品ですから、何をいわんや…ですけど。
意に反して、砂に囲まれた家に監禁されてしまった
男の心の変遷を描いていくことが、
この小説の要点だと思います。
私小説ではないですが、その要素を
多分に含んでいる作品だと思います。
男の理不尽な思いや焦燥、怒り、
希望、諦観めいた気持ち、
気持ちに反して、順応してしまう性だったり…
主人公である男の心の移り変わりが、
冷酷なほどに見事に描かれています。
非日常的な状況に追い込まれた
男の心の変遷ですが、不思議と共感を
覚える瞬間があったりします。
ただし、ネガティブな共感ですけど。
心の一部をざっくりと切り取られる
ような気分を数度、味わいました。
難を言えば、情景が浮かびづらいことです。
非日常的な空間が舞台なのですが、
その舞台の情景が今イチ、浮かびづらいです。
個々の文章の表現力は十分なのですが、
全体としての情景がぼやけるのです。
小説の舞台設定にリアリティが乏しいのに、
それを十分に補足するほどの必要な描写が
なされていない気がしました。
ずーっと目覚めの悪い夢の中に
いるような気分にさせられるのです。
なので、読んでいて疲れます。
ただ、それがこの小説の禍々しさを
惹き立てているとも評価できるのですが。
そんな「文学」を感じた作品でした。
安部公房[1956]『砂の女』新潮社、新潮文庫。
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