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ぼそっと。映画の話、本の話。
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第144回芥川賞、もう一つの受賞作…
むしろ、こっちの方が本命だった作品です。

朝吹真理子さんの『きことわ』を読みました。


選考委員の圧倒的多数が支持した作品だそうです。

巧みな技量をベースに五感にうったえる作品で、
現代アートを感じさせるような作品だと思いました。

夢と現実、現在と過去を行ったり来たりする作品。

優れた文学作品は、その世界を読み手に
立体的に体験させることができます。

さらに、本作は時間軸を取り込むことで
4次元的な視点を組み込むことに
成功していると思いました。

個々の文章はとっても、とっても作り込まれています。


ただ、個人的にはあまり好きではない類の
作品だなぁと思いました。失敬。

優れた作品だとは思うのですけど。

それぞれの文章からも作者のこだわりが感じられる
ことなど、優れているとは思いますが…

それが逆にあざとく感じられてしまいました

また、どうしても退屈な感が否めませんでした。


本作の好き嫌いというよりは、この類の作品が
あまり得意ではないということだと思います。

良し悪しより、好みの問題ということ。



朝吹真理子[2011]「ときこわ」『文藝春秋』文藝春秋、pp.390-443.
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西村賢太さんの作品を読みました。

第144回芥川賞受賞作です。


西村さんの他の作品(『暗渠の宿』新潮文庫)を読んで、
「この作家は凄いッ」と思いました。ハマりました。

『暗渠の宿』については、また改めて書きます。


この作家さんが良さは、文章が力強さ。

“凄み”という言葉がしっくりくるような
命を懸けたような力強さを発散させています。

最近では、めっきり見かけなくなった
私小説というのも、特徴だと思います。

社会の底辺層で生きる男の姿、

西村さん自身をそのまま投影した姿を
作品とする作家さんです。

まだ数多くは読んでいませんが、
これまで読んだ作品では全て共通して、
汗臭く、酒臭い男の体臭がむせるほどに、
時として嫌悪を感じるほどに漂ってきます。

一度、読んだ後では本屋さんに西村さんの
本が平積みされているのを見ただけで、
汗とお酒の臭いがするような気分に…

それくらい強い作品です(苦笑)。


芥川賞受賞作となった本作も、
他作品と同様、西村賢太の私小説に
どっぷりとつかった作品となっています。

学もなく、取りえもなく日雇いの仕事で、
その日暮をする19歳の青年が過ごした
一時期を描いています。

相変わらず、というか19歳にしてすでに、
嫌悪感を憶えるほどに男臭いです。

しかし、やはり19歳という年齢のせいか、
30歳前後の頃を描いた『暗渠の宿』などとは異なり、
かすかに爽やかな風を感じることがあります。

若さって素晴らしいって思いました。
ま、そのことは本作のテーマとは全く異なりますけど。


その辺が新人賞の割には保守的な傾向が強い…
(と自分は思っていいます)芥川賞の受賞につながった
のではないかな、などと思いました。



西村賢太[2011]「苦役列車」『文藝春秋』新潮社、pp444-493。

一昨年、昨年に話題となった『1Q84』を読みました。

蛇足もはなはだしいですが、
村上春樹さんの書き下ろし長編小説です。


青豆という特殊な能力と職業を持つ女性と、
その青豆と同年代の青年、予備校で非常勤講師をしながら、
漠然と小説家を夢見ている普通の人・天吾を
中心として、物語は語られていきます。

二人の視点を交互に交えながら、
「1Q84」の世界が描かれている小説です。

“BOOK 3”からはさらにもう一人からの
視点が加味されます。

「1Q84」という奇妙なタイトルですが、
その世界(…時代!?)は、小説のかなり早い段階で、
読者にもその大枠を把握できるように、
明らかにされています。

そして、小説が進むにつれて深化していきます…。


一言で感想をいうと、

村上春樹ワールドを堪能できる作品だと思います。


同氏の小説は、時として難解な(感覚的過ぎる…)
こともありますが、本作については
常識的な範囲に収まっていると思いました。


宗教や大麻など、比較的にアドホックなテーマを
取り込んでいるところに意外な印象も受けましたが、

非現実的な、まるで現実のような舞台で
登場人物の心の変遷を絶妙に描いています。

同氏のらしさ、真骨頂だと思います。


そして、印象派の画家を思わせるような、
カラフルでスパイシーな、どこかぶっ飛んだ
世界が紐解かれていきます。

いや、むしろ絡まっていくのかも。



とりあえず、“ノルウェイ”よりはぶっ飛んでいて、
“クロニクル”よりはシラフな小説に
仕上がっていると思います。


「うん、やっぱこの作家さんの感じは好きだなぁ。」

と自分なりに再認識しました。


ただ、村上春樹さんがどうしてこんなに、
社会現象になるほどに人気があるのか…

改めて不思議に思いました。


好き人は好きというか、
一部の熱狂的な愛好家に支持されるタイプ…

好き嫌いがはっきりと分かれる作風の
小説家だと思うのですけど。


稀有な作家。

熱狂的な愛好家はいても流行とはなりづらい…
そんな作風だと思うのですけど。不思議に感じます。

この作品を読みながら、楽しみながらも、
そんな違和感を改めて感じました。




村上春樹[2009]『1Q84 BOOK1』新潮社、
村上春樹[2009]『1Q84 BOOK2』新潮社、
村上春樹[2010]『1Q84 BOOK3』新潮社。

坂本司さんの作品を読みました。

初めて読む坂本司さんの作品で、
読み始めてみたら普段、ほとんど読むことのない
ショートショートでした。


友達から、「軽い気持ちで読んでね」
というお薦めとも言えないようなお薦めのもと、
借りて読み始めましたが…

その通り、軽い気持ちで読んだのが
功を奏したみたいです(苦笑)。

友達…正しいッ(笑)


10分前後で読める20~30編ほどの
ショートショートが収められています。

一つ一つが独立していて、
共通のテーマみたいなものも特にないです。


ただ、多くの作品がどことなく不気味です。

ホラーというと大袈裟すぎますけど、
ちょっとした狂気を含んでいます。

背中の筋をすーっと一撫でされるような
ショート・ストーリーが大半です。


ちょっとした合間に読むのに最適です。

そして、ちょっと涼しい気持ちを
味わえると思います…

ただし、“軽い気持ち”で読んでください。



坂本司[2011]『短劇』光文社、光文社文庫。

安部公房さんの作品を読みました。


文学史に残る著名な作品なので、
どういう風に感想を書けばいいのか…

難しいですが(苦笑)。

まずは「まさしく文学的だなぁ」って、
そんな底の浅い感じの印象を受けました。

でも、間違いなく文学的な薫りを
濃厚に漂わす作品だと思います。


まぁ近代日本文学史にその名を残す
作品ですから、何をいわんや…ですけど。


意に反して、砂に囲まれた家に監禁されてしまった
男の心の変遷を描いていくことが、
この小説の要点だと思います。

私小説ではないですが、その要素を
多分に含んでいる作品だと思います。


男の理不尽な思いや焦燥、怒り、
希望、諦観めいた気持ち、

気持ちに反して、順応してしまう性だったり…

主人公である男の心の移り変わりが、
冷酷なほどに見事に描かれています。

非日常的な状況に追い込まれた
男の心の変遷ですが、不思議と共感を
覚える瞬間があったりします。

ただし、ネガティブな共感ですけど。


心の一部をざっくりと切り取られる
ような気分を数度、味わいました。


難を言えば、情景が浮かびづらいことです。

非日常的な空間が舞台なのですが、
その舞台の情景が今イチ、浮かびづらいです。

個々の文章の表現力は十分なのですが、
全体としての情景がぼやけるのです。

小説の舞台設定にリアリティが乏しいのに、
それを十分に補足するほどの必要な描写が
なされていない気がしました。

ずーっと目覚めの悪い夢の中に
いるような気分にさせられるのです。


なので、読んでいて疲れます。

ただ、それがこの小説の禍々しさを
惹き立てているとも評価できるのですが。


そんな「文学」を感じた作品でした。



安部公房[1956]『砂の女』新潮社、新潮文庫。

東野圭吾さんの小説を読みました。

2009年に映画化もされているよう
(…帯で知りました)なので、
知っている人も多いかと思います。


重く切なく、心が揺さぶられる小説です。


少年犯罪を被害者の側から扱った作品です。

-----あらすじ-----

普通の会社員である長峰は、
妻を失ったものの、唯一の肉親である
一人娘の絵摩と暮らしている。

思春期にある絵摩は、長峰にとって
理解をできない年代でもあるが、
最愛の情をそそぎながら、
毎日を過ごしていた。

しかし、花火大会の日。長峰は、
絵摩と連絡がとれなくなってしまう。

そして、数日後、絵摩は死体と
なって発見される。

しかも、絵摩はレイプされうえに、
殺害され遺棄されいた。

あることから犯人の存在を知った
長峰は、復讐にかりたてられていく…。

----------------------


まず殺人事件などの犯罪に突然、
巻き込まれてしまった被害者の遺族の
心情って…と思わずにはいられません。

小説内でも、幾人もの人たちが
復讐に急激に傾斜していく主人公に、
共感の気持ちを抱いていきます。

そして、読んでいる自分も。


十分に想像し難いことですし、
したくないことですが…。

もっと複雑な感情が渦巻くだろうし、
あるいは全く感情さえ、
沸いてこないのかも知れません。


ただ、長峰の感情は必ず生じる
その中の一片なんだろうと思います。


また、この小説は少年犯罪を
取り扱っています。

少年法について扱った本は、
小説に限らず数多くありますが、
それらを読むたびに考えさせられます。

そして、自分の中で答えが出ないテーマです。


この小説を読んで、改めて考えさせられました。

結論でないですけど。


逃げ場のない哀しさと虚しさ、怒り…

苦しみ続ける長峰と共に、
大切なことを考えさせる小説です。



東野圭吾[2004]『さまよう刃』角川書店、角川文庫。

とりあえず、タイトル長い…。

いわゆる“もしドラ”を年始に読みました。


昨年(2010年)に話題となった本を
遅ればせながら、やっと読みました(^_^;A


正直、毎年必ずある一過性の流行りものの
一つだと思っていたので、期待もしていなく…

流行に遅れないため(…すでに遅れてますが)、
それに年初めの平和な電車通勤時間の暇つぶしには
いいかなぁ、という程度で読み始めました。


しかし、思った以上に…確実に、
自分の不埒な期待を裏切って面白かったですッ!!


ストーリーは、色んなところで紹介さているように、
とってもシンプルなものですし、
文章も単純明快というか、むしろ稚拙なものです。

ただし、あくまでこの小説の主題は、
ストーリー展開の妙味や文章の巧拙を表現する
ものではないと思います…確実に(苦笑)。

偉大な経営学者・ドラッガーの経営学論を
より分かりやすい形で、より身近な形で紹介する
というビジネス啓蒙書です。

その点、揺るぎはないと思われますし、
ある程度以上の成功を収めていると思います。

そして、それ加えてこの小説は、
経営学論の紹介書という点に留まらず・・・

なんかいいなぁ、とっても清々しいなぁ、
と思ってしまいました。

その稚拙さや単純さが逆に、
まっすぐな力強さとなって…不覚にも(苦笑)、
琴線をぐぐっと弾けさせる瞬間を
訪れさせるのです。


そもそも、この本に奇抜なストーリー展開や
特別な文才を求めるのは、

八百屋で牛カルビを注文するような
ことだと思います。


読んでみて、その手の書評の的外れ
感をすごく感じました…。

ちなみに、自分は原書を読む前に書評とか
全く読まないのですが、話題の一冊だったので
事前情報を断絶することが難しくって…汗ッ=3


やっぱ自分で実際に読んで…
感想を抱くって大事だなぁって、
改めて思ったりもしました。


それに、どの評論や書評が優れているのか、
本の内容を捉えているのか…

逆に捉えていないのか…

明らかにされてしまう気がしました。



おせっかいですが、気軽な気持ちで読みましょうッ!!

きっと興味を惹かれると思います。



岩崎夏海[2009]『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』ダイヤモンド社。
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