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貫井徳郎さんの小説を読みました。
文庫本で、上・中・下の全三巻。
なかなかの大作です。
葛城、久藤、ぼくの性格も、
育った環境もまるで違う三人の少年が
主人公となる小説です。
三人の共通項は、殺人を犯したこと。
それぞれに理由があり、
殺人を犯してしまった三人が
その罪を背負い、向き合いながら、
少年達を取り巻く社会と
そして、自分自身と葛藤します。
少年法(小説の時代背景は改正前)
と少年事犯を主題にした小説です。
これまでも新興宗教や薬物などの
社会性のあるテーマに果敢に挑戦し、
読者に深い印象を残してきた
貫井氏の筆力が、この小説でも
改めて発揮されたなぁと感じました。
少年事犯や(特に改正前の)少年法を
扱った小説はいくつかありますが、
その多くが少年法の不備に焦点を
あてているものが多いように思います。
この『空白の叫び』で
特徴的だなぁと思ったのは、
少年法の制度的な適否や
欠陥に焦点をあてるよりも、
「殺人」という大罪を犯した
少年の心の中を描写しようと
していることです。
「瘴気(しょうき)」っていう言葉が
とっても印象に残りました。
この「瘴気」と絡むことで
文庫の帯にも引用されていた
「心の闇―、便利な言葉だ」という
一節も、より印象的になる思います。
ちょっと飛躍し過ぎかなぁと
思うところもありますが、
重く心に残る小説でした。
貫井徳郎[2010]『空白の叫び』文藝春秋、文春文庫。
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